リスキリングとリカレント、最近よく耳にしますが、何が違うのでしょうか?
そして、40代・50代の女性管理職がセカンドキャリアを考える際、どちらを選べばよいのでしょうか?
まずは、リスキリングとリカレントトレーニングの違いを理解すること。そのうえで、どちらのアプローチももちろん価値ある道筋ではありますが、自身のセカンドキャリアゴール、業界の動向、そしてどの領域に興味があるかで選択の可能性は変わります。
リスキリングとは: 新しいキャリア機会を切り開く
リスキリングとは、新しいスキルを習得し、異なる役割や業界に移行することを指します。セカンドキャリアを考えている女性マネージャーにとって、リスキリングは特に成長中の業界やデジタルトランスフォーメーションが進行中の業界で、新たな機会を切り開くことができます。
リカレントトレーニングとは: 既存のスキルを強化する
リカレントトレーニングは、現在のスキルセットを定期的に更新し、強化することに焦点を当てています。業界にとどまりつつ、能力を高め、新しいトレンドに適応したい場合に理想的なアプローチです。
リカレントトレーニングの具体例
現職での継続的な改善
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- アプローチ: 現在の業界で継続的に学び、スキルを磨き続けましょう。最新のマネジメント手法や業界特有の進展について学ぶことが含まれます。
ニッチ分野での知識拡充
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- アプローチ: 自分の分野に関連する専門分野での知識を深めることに焦点を当てましょう。たとえば、新しい技術、規制、または業界に影響を与える市場動向について学ぶことが重要です。
セカンドキャリアの選択: リスキリングとリカレントトレーニングの比較
考慮すべき要因
キャリア目標
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- リスキリング: 新しい業界や役割に大きくシフトしたい場合に最適です。
- リカレントトレーニング: 現在の分野でのキャリアをさらに進展させたい場合に適しています。
業界の動向
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- リスキリング: テクノロジー、医療、コンサルティングなど、成長が期待できる業界を考慮しましょう。
- リカレントトレーニング: 金融や教育など、継続的な学習が競争力を維持するために不可欠なセクターに焦点を当てましょう。
個人的な充実感
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- リスキリング: 新しい情熱や興味を追求する機会を提供します。
- リカレントトレーニング: 現在の職業での専門性を深め、引き続き興味を持って取り組むことができます。
40代・50代の女性マネージャーへのリスキリングの具体例
今の環境を飛び出して、つまり今勤務している会社をやめて新しい領域でのセカンドキャリアを志向するのだとすると、リスキリングを選択するということになりそうです。
具体的にはどんな事例があって、どういったリスキリングが必要とされるのでしょうか。
1. コンサルティングやコーチングへの移行
なぜ?
経験豊富なマネージャーは、リーダーシップ、戦略、組織のダイナミクスに関する豊富な知識を持っています。コンサルティングやコーチングでは、この専門知識を他者に提供し、ビジネスのパフォーマンスを向上させたり、プロフェッショナルのキャリアを指導することができます。独立して働く柔軟性や、自分のスケジュールを設定できる自由、さらに自分の興味に合ったクライアントを選ぶことができるため、このキャリアは非常に魅力的です。
リスキルの方法:
- 関連する資格の取得: Certified Management Consultant(CMC)やInternational Coach Federation(ICF)の資格を取得し、信頼性を高めるとともに、最新の方法論やフレームワークを習得します。
- 専門知識の深化: 経験や興味のある分野に特化します。組織変革を指導した経験があるなら、チェンジマネジメントのコンサルティングに特化するなどです。
- コミュニケーションスキルの向上: コンサルティングやコーチングにおいて効果的なコミュニケーションは重要です。交渉やプレゼンテーションスキルを高めるワークショップやトレーニングに参加しましょう。
- プロフェッショナルネットワークの構築: 業界イベントに参加し、プロフェッショナル団体に加入し、オンラインコミュニティに参加して、クライアント獲得や業界動向の把握に役立てます。
- パーソナルブランドの構築: プロフェッショナルなウェブサイトを作成し、LinkedInで記事やブログを執筆し、業界イベントで講演を行うなどして、強力なパーソナルブランドを構築します。
メリット:
- 柔軟性とコントロール: フリーランスとして働いたり、自分のコンサルティング会社を設立したりできます。
- 影響力: 経験を活かして、ビジネスやプロフェッショナルの生活に具体的な変化をもたらすことができます。
- 収入の可能性: 評判やクライアントベースを築くことで、高収入が期待できます。
2. 技術分野への進出 (例: ITプロジェクト管理)
なぜ?
技術分野は最も成長している産業の一つであり、特にITプロジェクト管理はリーダーシップスキルと技術プロジェクトの管理能力を兼ね備えた役割です。このキャリアシフトは、革新的で成長を続ける分野に足を踏み入れ、長期的な雇用の安定性をもたらします。
リスキルの方法:
- 教育コースの受講: CourseraやUdemyなどのオンラインプラットフォームで、ITやプロジェクト管理の基礎知識を提供するコースを受講します。
- 資格の取得: Project Management Professional(PMP)、Certified Scrum Master(CSM)、ITILなどの資格を取得し、ITプロジェクトを効果的に管理する能力を証明します。
- 実践的な経験を積む: まずは現在の会社で新しいソフトウェアの導入を監督するプロジェクトや、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを管理するなどの小規模なプロジェクトから始めてみましょう。この実践的な経験は、ITプロジェクト管理のフルタイムの役割に移行する際に非常に役立ちます。
- ネットワーキング: 技術業界のプロフェッショナルと交流することで、最新のトレンドや求人情報、キャリア移行に役立つ実践的なアドバイスを得ることができます。
- 技術リテラシーの向上: プログラマーになる必要はありませんが、コーディング言語やクラウドコンピューティング、サイバーセキュリティの基礎的な理解を持つと良いでしょう。これにより、技術チームとのコミュニケーションが円滑になり、彼らが直面する課題をよりよく理解できるようになります。
メリット:
- 高需要: 企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中で、ITプロジェクトマネージャーの需要は高く、優れた雇用の安定性を提供します。
- 競争力のある給与: 技術業界は、特にリーダーシップ経験を持つ人にとって、魅力的な報酬パッケージを提供することで知られています。
- ダイナミックな環境: 技術業界の急速に進化する革新的な性質は、継続的な学習の機会を提供し、仕事において常に新鮮さを保ちます。
- 移転可能なスキル: あなたの既存のマネジメントスキル(リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決)は、ITプロジェクト管理の役割にも直接適用できます。
3. 医療管理のキャリアを追求する
なぜ?
日本の高齢化に伴い、医療サービスの需要が増加しており、医療管理は安定して成長している分野です。経験豊富なマネージャーは、リーダーシップ、運営、戦略に関するスキルを活かして、医療サービスの改善や大規模なチームの管理、規制の遵守を確保する役割に移行できます。
リスキルの方法:
- 教育の進展: 慶應義塾大学や東京医科歯科大学などの日本の教育機関で、働きながら学べる医療管理学修士(MHA)などのプログラムに参加することを検討してください。
- 業界知識の習得: 日本の医療政策、規制、およびシステムに関する理解を深めましょう。日本の医療システム、医療倫理、または公衆衛生管理を学ぶことが含まれます。
- インターンシップ/ボランティア: 医療管理においては実践的な経験が重要です。病院、クリニック、または医療NGOでインターンシップ、ボランティア、またはパートタイムの仕事を探しましょう。短期の経験でも、貴重な洞察を得て、医療業界でのネットワークを構築するのに役立ちます。
メリット:
- 社会的影響: 医療管理のキャリアにより、医療サービスの質を向上させることで、患者の結果や地域社会の健康にポジティブな影響を与えることができます。
- 安定した雇用: 医療分野は最も安定した産業の一つであり、特に管理職においては、熟練したプロフェッショナルの需要が常に高いです。
- 多様な機会: 医療管理は、病院の管理から公衆衛生政策まで、さまざまな役割を提供し、この分野で複数のキャリアパスを提供します。
- 個人的な充実感: 医療分野で働くことは、非常にやりがいがあり、人々の生活に具体的な変化をもたらすことで、充実感を得られます。
4. 起業への挑戦
なぜ?
豊富な経験とネットワークを持つ方にとって、ビジネスを始めることは、マネジメントスキルを活かしながら情熱を追求し、市場のニーズに応えるやりがいのある方法です。コンサルティング、リテール、テクノロジー、その他の分野に興味がある場合、起業は自分のビジョンに基づいて事業を立ち上げ、成長させる自由を提供します。
リスキルの方法:
- 起業プログラム: 日本商工会議所やStartup Weekend Tokyoが提供する起業コースやワークショップに参加しましょう。これらのプログラムでは、ビジネスプランニング、ファイナンス、マーケティング、運営などの重要なトピックを学べます。
- メンタリング: 女性起業家を支援するプログラムやネットワークを通じて、メンターの指導を受けましょう。ビジネスアイデアの洗練から、ビジネス運営の課題に対処するための貴重なアドバイスを得ることができます。
- ビジネスプランの作成: 価値提案、ターゲット市場、財務予測、マーケティング戦略を詳細に記載したビジネスプランを作成しましょう。しっかりと考え抜かれたプランは、資金調達の確保やビジネス成長の指針として不可欠です。
- 資金調達の知識: 利用可能なさまざまな資金調達オプション(ローン、助成金、ベンチャーキャピタルなど)について学びましょう。女性起業家向けの特定の資金やリソースもあり、事業の立ち上げと成長に必要な財政的支援を提供します。
- デジタルスキル: デジタル時代において、eコマース、デジタルマーケティング、ソーシャルメディア管理の理解はどのビジネスにとっても重要です。UdemyやSkillshareなどのプラットフォームでコースを受講し、デジタルスキルを向上させましょう。
メリット:
- 自主性: 起業は、自分のビジョンや価値観に沿った意思決定を行える自由を提供します。
- 成長の可能性: 起業の道は、スケーラブルで収益性の高いビジネスを創造し、時間とともに拡大し、革新する機会を提供します。
- 個人的満足感: 自分の力で何かを築くことは非常にやりがいがあり、自分の情熱や専門知識に合致している場合は特にそうです。
- 経済への貢献: 起業家として、雇用創出や経済発展に貢献し、地域や国の経済に貢献する重要な役割を果たします。
5. 教育・研修分野への移行
なぜ?
指導や教育に情熱がある場合、教育や研修分野への移行は非常にやりがいのあるセカンドキャリアとなります。これまでの豊富な経験を活かし、次世代のプロフェッショナルを教育したり、自分の専門分野で企業研修を提供することができます。
リスキルの方法:
- 教育資格の取得: 日本の教育機関やオンラインプラットフォームで教員免許や成人教育の資格を取得することを検討しましょう。これにより、大学、職業学校、企業の研修部門での教育職に備えることができます。
- カリキュラム開発: 効果的な研修プログラムの設計・実施方法を学びましょう。インストラクショナルデザインや成人学習理論、研修評価法を学ぶことで、プログラムをより効果的かつ魅力的にすることができます。
- パブリックスピーキングスキル: 教育者やトレーナーにとって、パブリックスピーキングは重要なスキルです。プレゼンテーションや講義の練習を重ね、自信を持って伝える力を養います。
- 経験の共有: マネジメント経験をもとに、リーダーシップや組織変革などのテーマに関するセミナーやワークショップを開発し、提供しましょう。これは他者を支援するだけでなく、自分の専門分野での権威としての地位を築くことにもつながります。
- 教育機関との提携: 大学や職業学校、企業の研修部門と協力して、専門的なコースや研修プログラムを提供しましょう。教育機関との関係を築くことで、継続的な機会を得ることができます。
メリット:
- 知識の共有: 次世代のリーダーやプロフェッショナルを育て、貴重な知識と経験を伝える機会があります。
- 柔軟なスケジュール: 多くの教育・研修職はパートタイムや契約ベースの仕事を提供しており、他の個人的な興味やコミットメントとのバランスを取りやすくなります。
- 継続的な関与: 他者を教えることで業界動向と接点を保ち続け、自己の知識も最新かつ関連性のあるものに保つことができます。
- 地域社会への貢献: 教育や研修を通じて他者を育成することで、地域社会全体の発展に貢献し、個人の目標達成をサポートします。
6. 非営利・社会セクターへの移行
なぜ?
非営利・社会セクターは、利益ではなく社会的影響に焦点を当て、キャリアを個人的な価値観と一致させたい人にとって理想的な選択肢です。社会福祉、環境保護、地域社会の発展など、重要な課題に取り組む有意義なプロジェクトに携わる機会があります。
リスキルの方法:
- セクター教育: 非営利管理、社会福祉、公衆政策に関連するコースを学びましょう。非営利セクター特有の課題や機会を理解することが、成功への鍵となります。
- ボランティア経験: NGOやコミュニティグループでボランティアをして経験を積みましょう。この実践的な経験は、セクターへの理解を深め、ネットワークを築くのに役立ちます。
- 資金調達スキル: 非営利団体は運営資金を資金調達に依存していることが多いです。リソース調達、助成金申請、ドナー関係に関する知識を習得し、プロジェクトに必要な資金を確保できるようにしましょう。
- プロジェクト管理: 既存のマネジメントスキルを活かして、社会プロジェクトを効果的に計画し、実行しましょう。プロジェクトライフサイクル、ステークホルダー管理、インパクト評価を理解することが、非営利セクターでは重要です。
- 文化的な理解: 多様なコミュニティや社会問題に関する理解を深めましょう。非営利セクターで効果的に働くためには、様々なグループやステークホルダーとの連携が重要です。
メリット:
- 目的主導の仕事: キャリアを価値観と一致させ、社会にポジティブな影響を与えることができます。
- 多様な経験: 社会、環境、経済の課題に取り組むさま幅広いプロジェクトに取り組み、充実した多様なキャリアを提供します。
- ネットワーキング:社会の改善に取り組む同じ考えを持つ個人や社会とつながり、専門的および個人的なネットワークを拡大します。
- スキルの活用:リーダーシップ、管理、戦略的スキルを活用して、コミュニティや組織に有意義な変化をもたらします。
キャリアの次のステップを踏み出す
リスキリングによって、こんなに幅広くいくつもの道が開けるなんて、わくわくします。
私の所感はこのような感じです。
- コンサル・コーチング:
私の知人もキャリアコーチの資格を取っていましたし、比較的身近な選択肢。
- ITなど技術領域:
セカンドキャリアとしてのハードルは高いけれども、デジタル領域はAI始め新しい技術が次々と出てくるので、好奇心がおさえきれない、キャリアはともかくとしても、学んでおきたい、キャッチアップしておきたいエリアです。
- 医療関連:
医療の中でも特に介護業界は、万年人手不足、特にマネジメント層が決定的に不足していると聞いています。マネジメント経験を活かせることがあるかもしれません。
- 起業:
規模の大きな起業は難しくとも、フリーランスから、マイクロ法人立ち上げというステップは現実的かもしれません。
- 教育:
この選択肢は、私はなし。
- 非営利組織:
私自身はボランティアという活動に参加したことがないのですが、先日、ムスメが保護猫のボランティアお手伝いをしてきました。登山友達のひとりは里山保護のボランティア活動を始めたとのこと。自分の関心の高いことからまずは参加してみる、スタートのハードルは低そうです。
みなさんは、この中に興味の惹かれる分野がありましたか?
いきなり正解にたどり着くことはないくらいの気持ちで、これは!と思ったリスキリングからまずは始めてみる、ですね。
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