今年の夏も暑かったので、涼しい高原の避暑地で過ごす別荘ライフに憧れました。観光客もいない自分だけの空間で、静かに気ままに緑の中で過ごすのは、幸福度の高い毎日が過ごせそうだな・・と。
でも、実際のところ、別荘を所有するとどんなことが起こるのでしょうか。外から見ているだけでは分からないことが色々ありそうです。購入してから後悔することのないよう、購入検討の前に、気をつけるべきこと、留意すべきこと、あるいは、覚悟しておくべきことをまとめます。
1. 経済的負担
別荘を所有することは、想像以上に経済的な負担が大きいものです。ここでは、その詳細を見ていきましょう。
1-1. 初期投資の高さ
別荘の購入には、通常の住宅よりも高額な初期投資が必要です。人気のリゾート地では、都心のマンションに匹敵するほどの価格になることもあります。
具体的な数字を挙げると、軽井沢や那須、富士山麓などの人気エリアでは、広さにもよりますが、1,000万円から5,000万円程度の投資が必要になることが多いです。さらに、土地と建物を別々に購入する場合は、それ以上の費用がかかる可能性があります。
また、購入時には不動産取得税や登録免許税なども必要で、これらは物件価格の数%から10%程度になることもあります。
1-2. 固定資産税と維持費の継続的支出
別荘を所有すると、毎年固定資産税を支払う必要があります。これは地域や物件の評価額によって異なりますが、年間数万円から数十万円程度かかることもあります。
さらに、以下のような継続的な支出も発生します:
– 管理費:月額1万円から5万円程度
– 光熱費:使用頻度にもよりますが、月額数千円から数万円
– 修繕積立金:月額数千円から1万円程度
これらの費用は、使用頻度に関わらず発生するため、年間で数十万円から100万円以上の固定費を覚悟する必要があります。
1-3. 予期せぬ修繕費用
自然環境にさらされる別荘は、通常の住宅よりも劣化が早い傾向があります。台風や雪害による予期せぬ修繕が必要になることも少なくありません。
例えば:
– 屋根の修理:数十万円から100万円以上
– 外壁の塗り替え:100万円から300万円程度
– 水道管の凍結破裂修理:数万円から数十万円
– 台風による窓ガラスの破損:1枚あたり数万円
これらの費用は、予想以上に家計を圧迫する可能性があります。また、別荘地ならではの問題として、業者の手配が難しく、都市部より高額になることも考慮する必要があります。
2. 維持にかかる負担 – 時間とエネルギー
別荘の所有は、思いのほか多くの時間とエネルギーを要します。ここでは、その詳細を見ていきましょう。
2-1. 定期的なメンテナンス作業
庭の手入れ、室内の清掃、設備のチェックなど、定期的なメンテナンスが欠かせません。これらの作業は、休暇を楽しむはずの時間を奪ってしまうことがあります。
具体的なメンテナンス作業の例:
– 庭の手入れ:草刈り(月1回程度)、剪定(年1-2回)、落ち葉掃き(秋季)
– 室内清掃:掃除機がけ、拭き掃除(使用の都度)
– 水回りの点検:配管の漏水チェック、排水溝の清掃(月1回程度)
– 外壁・屋根の点検:亀裂や劣化のチェック(年1-2回)
– 害虫駆除:シロアリ対策、ネズミ対策(年1回程度)
これらの作業を自身で行う場合、1回の滞在で半日から1日程度の時間が必要になることもあります。業者に依頼する場合は、その手配や立ち会いの時間、そして費用が別途必要になります。
2-2. 滞在時以外の管理の手間
滞在していない期間も、別荘の状態を定期的に確認する必要があります。遠方にある場合、この管理が大きな負担になることがあります。
必要な管理作業の例:
– 定期的な換気(カビ防止のため)
– 水道の開閉栓(冬季の凍結防止)
– 郵便物の確認と処理
– 不審者や獣害のチェック
– 台風や大雪の後の緊急点検
これらの作業のために、月に1回程度は別荘に足を運ぶ必要があるかもしれません。または、地元の管理会社に依頼する場合、月額1万円から5万円程度の費用が発生します。
以上のように、別荘の所有には予想以上の経済的負担と時間・エネルギーの消費が伴います。これらの負担が生活の質を向上させるものなのか、それとも新たなストレス源となるのか、慎重に検討する必要があります。
3. 将来的な不安要素
別荘所有は長期的な視点で考える必要があります。特に、売却を検討する際には、現在の市場動向を踏まえた慎重な判断が求められます。
3-1. 不動産価値の変動
別荘の価値は、経済状況や地域の人気度によって大きく変動します。将来、売却を考えた時に、購入時よりも価値が下がっている可能性もあります。
現在の別荘市場の特徴:
– コロナ禍の影響で、都市部から離れた別荘地への需要が一時的に増加
– 人気エリアと そうでないエリアの二極化が進行
– 築年数や設備の古さによる価値の低下が顕著
人気が維持されている地域:
1. 軽井沢(長野県):東京からのアクセスの良さと高級リゾートのイメージで人気維持
2. 那須(栃木県):自然環境の豊かさと温泉地としての魅力で安定した需要
3. 熱海(静岡県):新幹線でのアクセスの良さと海のリゾート感で再評価
4. 蓼科(長野県):避暑地としての人気と豊かな自然環境で需要安定
5. 富士五湖地域(山梨県):富士山の眺望と多様なアクティビティで人気継続
売却検討時の留意点:
– 立地条件:人気エリアでも、具体的な場所によって需要に差がある
– 建物の状態:適切なメンテナンスが行われているかが重要
– 設備の現代化:古い設備のままでは売却価格が大幅に下がる可能性がある
– 市場動向:季節や経済状況によって、売却のタイミングを見極める必要がある
– 売却にかかる費用:仲介手数料や税金などを考慮に入れる
アドバイス:
1. 定期的な市場価値の確認:不動産業者に評価を依頼し、市場価値の変動を把握する
2. 計画的なリノベーション:売却を見据えて、計画的に設備の更新やリノベーションを行う
3. 複数の不動産業者への相談:一社だけでなく、複数の業者に相談し、幅広い視点を得る
4. 税制の理解:売却時の税金(譲渡所得税など)について事前に理解しておく
5. 柔軟な価格設定:市場動向に応じて、柔軟に価格を設定する心構えを持つ
3-2. 相続問題
別荘の相続は、予想以上に複雑になることがあります。相続税の問題や、家族間での利用方法の調整など、様々な課題が生じる可能性があります。
相続時の留意点:
– 相続税評価額の確認:別荘の評価額が相続税の計算に影響する
– 共有名義にする場合の取り決め:利用規則や維持費の分担などを明確にする
– 売却か継承かの判断:家族の意向や維持能力を考慮して決定する
3-3. 高齢化に伴う利用困難
年齢を重ねるにつれ、長距離の移動や別荘の管理が困難になることがあります。50代で購入を考える際は、10年後、20年後の自分の生活スタイルも想像してみることが大切です。
高齢化に備えたアドバイス:
1. アクセスの良い場所の選択:将来の移動負担を考慮し、アクセスの良い場所を選ぶ
2. バリアフリー化の検討:段差の解消や手すりの設置など、将来を見据えた改修を行う
3. 地域コミュニティとの関係構築:地元の方々との関係を築き、緊急時のサポート体制を整える
4. 管理代行サービスの利用:年齢とともに自己管理が難しくなった場合に備え、信頼できる管理会社を見つけておく
以上、別荘所有検討にあたって、3つのポイントをご紹介しました。
リタイアした後もまだ体力もあるだろうし、時間は十分あるはずなので、別荘を維持・メンテナンスすることが仕事にかわるやり甲斐に、別荘が”会社に替わる居場所”に、なるかもしれません。
とはいえ、簡単な買い物ではありませんから、ここで挙げたデメリットも十分に理解した上で、自身の生活スタイルや将来のプランと照らし合わせて、慎重に判断したいですね。